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小遣い稼ぎの裏技、「木曜早朝の円売り」は本当にトクか

「円を売るなら木曜日早朝。顧客にこっそり教えています」。

ある外国為替証拠金取引(FX)業界の関係者から聞いた話だ。「こっそり教えている」というのは、日本時間木曜日午前6時前に円を売って外貨を買い、6時が過ぎたら逆の取引をするという超短期売買の手法。あまりリスクをとらずに、しかも手っ取り早く、スワップポイントと呼ばれる“金利収入”を普段の3倍稼げるという。翌週月曜日が祝日になっている木曜には妙味がさらに増し、普段の4倍稼げる。いわば裏技であり、文字通り「早起きは三文の得」である。

どの程度のお金が稼げるのかを書く前に、まずスワップポイントについて説明しておこう。

FXでは、円など低金利通貨を売り豪ドルなど高金利通貨を買うと、金利差に相当する収入を日々受け取れる。これがスワップポイントだ。意外と知られていないが、1日分のスワップポイントをもらうために、丸1日外貨を持っている必要はない。夏の場合、スワップ付与の基準時点を午前6時としているケースが一般的だからだ。極端なケースだが、午前5時59分に外貨を買って午前6時1分に売り、6時をはさんだ2分間の保有で1日分もらうことも可能な仕組みになっている業者もある(業者によっては、早朝に取引できない時間があるなど、このような手法を使えない場合もある)。

木曜日早朝にこうした売買をすると、スワップポイントを普段の3倍(3日分)得られる。為替取引は2営業日後に決済するルールになっており、土曜日と日曜日の2日間が営業日ではないため、決済までに2日余計にかかるからである。同じメカニズムにより、翌週の月曜日が祝日になっている木曜日早朝なら、4日分もらえる(木曜日早朝の売買で普段より多いスワップポイントを付与する仕組みになっていない業者もあるなど対応には違いもあり得るので、個別に確認が必要)。

もちろん、いくら多めの金利収入を得ても為替差損を被ってしまえば帳消しになりかねない。だが、外貨を極めて短い間保有するだけなら、相場変動のリスクも相対的に小さいだろう。

以上のような仕組みにより、翌週月曜日が祝日になっている木曜日早朝にFXで円の超短期売買をするとメリットが大きいのだ。実は9月にはこの条件を満たす木曜日がある。15日だ。翌週月曜日(19日)は敬老の日になっている。

では、「4日分のスワップポイント」とは一体いくらくらいなのか。

スワップポイントは通貨によって違うし、業者ごとに異なる。日々変動しうるから一概には言えないが、比較的金額が大きくなっている豪ドルについて足元の数値を見ると、ある大手業者では1万豪ドル(80万円程度)当たり1日に104円だ。この4日分だから約420円。10万豪ドル(800万円程度)買えば約4200円が手に入る。一方、取引コストに当たるスプレッド(買値と売値の差)は2~3銭程度が多い。仮に2銭だと、10万豪ドルの売買で2000円がコストになる(取引手数料はないものとする)。スワップポイントの4200円からこの分を差し引くと2200円が利益。ビックリするような額ではないが、サラリーマンの昼食代は1回平均490円(新生銀行の子会社、新生フィナンシャル調べ)。その4回分のお金が、たった数分間の豪ドル保有で転がり込んでくるなら、おいしい話だろう。

800万円相当の豪ドルを買うなんて大変? いやそうでもない。FXでは元手(証拠金)の何倍もの外貨を買えるからだ。単純計算だが、規制上限の25倍で利用するなら32万円の元手があればいい。

以上の事情を見る限り、「木曜日早朝の円売り」は魅力的だ。冒頭で紹介した通り、業界関係者が顧客に「こっそり教える」と受けがいいというのもわかる。

だが、うまい話には裏がある例が多い。本当にトクなのか?

FX業者や為替市場の関係者に聞いて回ると、注意事項もあることがわかってきた。まずスプレッド。「取引が薄くなる早朝には、流動性リスクを反映して通常時より広がることが多い」(GMOクリック証券)。とすれば、コストが膨らみかねない。

実は、為替変動リスクも無視できない。取引が少ない早朝に短時間、外貨を保有するだけなのでリスクが小さいと思いがちだが、決め付けるのは早計だそうだ。例えば、スワップポイント狙いの短期売買を多くのFX利用者がすると、午前6時前に外貨相場が上がり、午前6時を過ぎると下がりがちになり、為替差損を被る恐れが出てくる。ある業者からは「午前6時にはカバー先(業者にとっての外貨の仕入れ先)がスワップポイント分を加味して注文の入れ替えを行う。その分、相場が顧客にとって不利な方向に動き、プラスマイナスはゼロになることがある」との指摘も聞いた。

ヘッジファンドなど投機筋の動きにも警戒がいる。「FX投資家が午前6時前に豪ドル買いをした後、投機筋が豪ドル売りを仕掛けるといった事態もあり得る」(為替市場関係者)。FX投資家が慌てて売りに転じ、相場が下がったところで、投機筋は買い戻して利益を確保する。FX利用者の通称にちなんで、“ミセス・ワタナベ狩り”と呼ばれる手口である。典型的な例が今年3月17日早朝だろう。まさに翌週月曜日(21日)が祝日(春分の日)になる木曜日だったが、午前6時過ぎから約20分間に投機筋によると見られる猛烈な円買いが発生。円は対豪ドルで約4円も上がった。

「木曜日早朝の円売り」は一見魅力的で、実際に手っ取り早く小遣いを稼げる可能性もあるだろう。ただ、リスクもある。「早起きは三文の得」になるのかどうか。最終的には自己責任で判断していただくしかない。

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