SSブログ

利上げもくろみ始めたECB、トリシェ総裁発言に変化の兆し

[フランクフルト 14日 ロイター] 

欧州中央銀行(ECB)のトリシェ総裁がインフレに対して強硬な姿勢を示したことで、ECBがユーロ圏周辺国の銀行への資金調達支援策を継続する一方で、政策金利の引き上げを計画しているとの観測が高まっている。

トリシェ総裁は、13日に金利据え置きを発表した後の記者会見で、中期的な物価安定へのリスクが「上向く可能性がある」と警告し、市場関係者を驚かせた。

総裁はさらに、金融市場の混乱が拡大していたにもかかわらず原油価格上昇によるインフレを抑えるため利上げした、2008年の行動を思い起こさせる発言を行った。

当時、その数カ月後にリーマンが破綻し、ECBの引き締めが世界経済をリセッション(景気後退)に追い込んだと批判されたにもかかわらず、トリシェ総裁がそのエピソードを思い出させたことは、ECBが再び同じ行動に出る可能性を暗に警告したものと受け止められている。

トリシェ総裁のコメントを受け、市場では年内あるいは来年初めに利上げされるとの見方が高まり、ユーロ圏の金利先物は14日の取引で2011/12年物を中心に下げ幅を拡大。

EURIBOR3カ月物は前日の0.998%から1.006%に上昇し、1日としては昨年10月21日以来の大幅な上昇を演じた。

エコノミストの多くもECBが2011年終盤に利上げする可能性があるとの見方を強め、グローバル・インサイトのハワード・アーチャー氏は年内の利上げ確率を60%から70%に引き上げた。

インベステックのフィリップ・ショー氏は、その確率を昨年終盤時点の55―60%から「少なくとも70%」に、INGのピーター・バンデン・フート氏も13日以前の20%から40%に、それぞれ引き上げた。

<ECBの任務が変化> 

トリシェ総裁は13日の会見で、ユーロ圏周辺国の銀行を支えるため実施している支援策は、金利政策とは別の独立した措置だと強調。その発言は、ECBの任務が変化したことを示唆したものと受け止められている。

昨年はECBが利上げに着手する前に金融支援策を打ち切ると予想されていたが、実際には、1年物の特別オペ打ち切りを通じて緊急措置の段階的廃止に乗り出した。

だが、今回はその逆の任務を引き受けざるを得ない。例えば、ECBは銀行が必要とする以上の資金を供給する一方で、ドイツなどユーロ圏主要国のインフレを抑制するため利上げに踏み切る可能性がある。

ソシエテ・ジェネラルのエコノミスト、ジェームズ・ニクソン氏は「興味深い点は、ECBはこれまで『理論的な可能性』としてその可能性を示唆していたが、今回のトリシェ総裁のコメントは、ECBがその措置を中心的シナリオとして受け入れる可能性を明確に表明したことだ」と指摘した。

ECBのアプローチが明確に変化したことは、過去数カ月におけるユーロ圏の景気回復と、ソブリン債務問題の深刻化を受けた動きだ。

ユーロ圏周辺国および銀行の債務問題は予想以上に深刻で、ポルトガル中銀は11日、ポルトガルの銀行はインターバンク市場で十分な資金を調達できないため、今年と来年はECBに資金調達を依存せざるを得ない、との考えを示した。

一方、ユーロ圏中核国の景気は予想以上に好調で、昨年のドイツ経済は東西統一以来、最高の伸び率を記録。今年は賃金が大幅上昇すると見込まれている。

<中央銀行の信頼性> 

多くのエコノミストは、ECBがオペ金利を引き上げても、金融支援策を通じて市場に大量の資金供給を続ける限り、経済成長やインフレ率に及ぼす影響は軽微だと考えている。ロイターの計算では、ユーロ圏の金融市場には、今のところ約500億ユーロの過剰流動性が存在する。

しかも、ECBが年内にこのアプローチについて明確な決断を下すとは考えにくい。ユーロ圏各国は現在、債務問題に対する「包括的な対策」を議論しており、3月までに結論を出す方針だ。それが銀行に対する市場の信頼感を後押しすれば、ECBは利上げと歩調を合わせて緊急支援策を段階的に解除できる可能性がある。 

だが、トリシェ総裁は、インフレ抑制に関するECBの信頼性を損ないたくないというメッセージを市場に送ろうとする可能性がある。

世界の主要中央銀行はその信頼性が損なわれており、英国ではイングランド銀行がインフレを抑制できないとの懸念から、経済成長が低迷しているにもかかわらず、今年夏までの利上げを織り込む水準に市場金利が上昇している。英国では過去数年に渡り、一貫してインフレ率が目標を上回っている。

米国でも連邦準備理事会(FRB)が打ち出した6000億ドルに上る債券買い入れプログラムに対し、準備通貨としてのドルの地位を危うくするものだとの批判が渦巻いている。

ECBは債務危機を受けて債券買い入れプログラムを実施し、金融政策面で譲歩に追い込まれたが、インフレファイターとしての評価を再構築すれば、市場のボラティリティ抑制にも寄与すると考えている。

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:マネー

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。