期待はずれの雇用統計でも、ドル/円は1月陽線引けとなりそう! そのワケとは?
http://zai.diamond.jp/articles/-/101369
1月7日に発表された米国の2010年12月の雇用統計は、注目されたNFP(非農業部門雇用者数)の前月比増加幅が、事前予想を下回りました。
それでも、目先の米ドル高の流れは変わらないのではないでしょうか?
■「1月第1週効果」なら、8割の確率で1月は米ドル高に
米ドル/円の年明け早々、1月第1週の方向性は、1月の月間を通しての方向性を先取りする傾向があります。
1月第1週の米ドルの週足と1月の月足について、過去10年間を調べたものですが、8割の確率で一致していました。
今年の1月第1週の米ドル/円は81円台前半でスタートしましたが、前述のようにNFPが事前予想より悪く、米ドルは反落したものの、それでも週末の米ドル/円の終値は83円台前半でした。
つまり、1週間を通じて見ると、米ドルは陽線(米ドル高)引けだったのです。
これに「1月第1週の週足は、8割の確率で1月の月足と一致する」といった経験則を当てはめると、1月の終値で米ドルが81円を下回る可能性は低く、1月は8割の確率で米ドル高で終わる見通しになります。
「1年の計は元旦にあり」ということわざがありますが、それと似たような金融市場の言い回しとして、1年の相場は1月で決まるといった意味の「1月効果」という考え方があります。
それを米ドル/円に当てはめると、1月相場は1月第1週で決まるといった「米ドル/円の1月第1週効果」ということになるのかもしれません。
■FRBにとっても米国の失業率の改善はサプライズだった
それでも、2010年12月の雇用統計の結果は期待はずれで、そんな経験則は今回、はずれるかもしれないと思っている方もいらっしゃるでしょうか?
ただ、NFPは事前予想より悪かったものの、失業率に対する評価は正反対で、FRB(米連邦準備制度理事会)のメンバーもビックリの良い結果だったのです。
今回発表された2010年12月の失業率は、前月の9.8%から9.4%へと大きく低下し、大幅改善となりました。
FRBのメンバーは、この2010年12月の失業率をどのように予想していたでしょうか?
FRBのメンバーはエコノミストではないので、毎月の失業率の予想を公表していません。ただし、年末時点の失業率については、年に数回「見通し」として公表しています。
その2010年末時点における失業率の見通しの中心は、2010年6月開催のFOMC(米連邦公開市場委員会)での公表ベースでは9.2~9.5%でした。
さすがFRB、2010年12月に失業率が9.4%になることを半年前から的中させていたということになるでしょうか?
しかし、残念なことに、昨年11月に開かれたFOMCの会合で、この見通しは修正され、2010年末の失業率見通しの中心を9.5~9.7%に変更したのでした。
変更直後に発表された2010年12月の失業率が9.4%だったわけですから、FRBはさっそく、失業率の予想をはずしてしまったのです。
つまり、米国の失業率は、FRBの予想を超えるような急改善を見せているのです。
毎月の景気指標は振れやすいものですから、1回の結果だけではまだよくわかりませんが、失業率こそFRBの金融政策への影響が大きく、米国の利上げへの転換のカギを握るものだけに、注目されるところでしょう。
■失業率が9%以下になりそうになったなら、米利上げへ
失業率と米国の政策金利である「FFレート」を、それぞれ少し加工した上で重ねてみたものですが、これを見ると、失業率はほとんどFFレートそのものです。
ただ、最近はFFレートと失業率の関係が大きく崩れています。これは基本的に、政策金利をマイナスにできないからです。
逆に言えば…
FRBは、大幅なマイナス金利にする代わりに、「QE」と呼ばれる量的緩和などを行っています。
そのような量的緩和がなければ、本来利上げができるようになるためには失業率が2%程度、大幅に下がる必要があることも、このグラフは教えてくれています。
ただし現実的には、「QEもやっているから、失業率が2%下がらなくても、せいぜい9%まで下がったら利上げができる」というのが、FRBの金融政策などを分析する専門家「FEDウォッチャー」と呼ばれる人々の一般的な見方です。
今回、9.4%まで失業率が急低下したことで、利上げの最低条件とも言える失業率9%がかなり近くなってきました。
ちなみに、FRBは2011年末時点の失業率見通しの中心を8.9~9.1%としていましたが、前述のように、2010年末時点ですでに、予想以上に失業率が改善している可能性が出てきたのです。
今後、2011年末の失業率見通しも修正され、今年中に失業率が9%以下になってくるとの見通しになるようならば、それは「年内利上げ想定」といった意味にもなるのです。
■最近の欧州財政危機に対する懸念の急拡大は気になる…
今回のコラムでは、米ドル/円の「1月第1週効果」とFRBの「失業率サプライズ」を中心に述べてきました。
私のお話は、結論が単純化されているものの、中身は専門的で決して平易ではないのに、とても多く閲覧いただいているようです。FX投資家のみなさんの知的な成長のために少しでも役立っているのがうれしいので、最後にユーロについても書きます。
ユーロは年明け早々、大幅安となりました。1月は最もユーロ安になりやすい傾向があるので、まさに経験則どおりと言えます。
ただ、ちょっと気になるのは、ここ数日の欧州財政危機に対する懸念の急拡大です。
欧州全体の信用リスクを示す欧州CDS指数です。これを見ると、昨年11月末まで欧州への懸念は再拡大していましたが、その後は緩やかに改善に向い、年末年始には、懸念はかなり後退しました。中国などのユーロ圏支援の影響もあったと思います。
ところが、直近で急速に悪化しているのです。
欧州財政危機によるユーロ安は米ドル高をもたらしますが、それが世界的なリスク回避につながると、ユーロ圏の中核であるドイツの金利が低下し、米国の金利も低下するため、欧米金利差は大きく変化せず、必ずしも積極的な米ドル買いとはなりません。
ただ、欧州への懸念が限定的で、世界的なリスク回避につながらなければ、ドイツの金利が低下する一方で、米国の金利は下がりません。そのため、欧米金利差のドル優位拡大で積極的な米ドル買いが進み、米ドルは全面高となる可能性が出てきます。
このように見てくると、全面的な米ドル高か、それとも限定的な米ドル高なのかを考える上で、ここ数日の欧州の信用リスク急悪化がこの先どうなるかが、1つのポイントになると思います。
1月7日に発表された米国の2010年12月の雇用統計は、注目されたNFP(非農業部門雇用者数)の前月比増加幅が、事前予想を下回りました。
それでも、目先の米ドル高の流れは変わらないのではないでしょうか?
■「1月第1週効果」なら、8割の確率で1月は米ドル高に
米ドル/円の年明け早々、1月第1週の方向性は、1月の月間を通しての方向性を先取りする傾向があります。
1月第1週の米ドルの週足と1月の月足について、過去10年間を調べたものですが、8割の確率で一致していました。
今年の1月第1週の米ドル/円は81円台前半でスタートしましたが、前述のようにNFPが事前予想より悪く、米ドルは反落したものの、それでも週末の米ドル/円の終値は83円台前半でした。
つまり、1週間を通じて見ると、米ドルは陽線(米ドル高)引けだったのです。
これに「1月第1週の週足は、8割の確率で1月の月足と一致する」といった経験則を当てはめると、1月の終値で米ドルが81円を下回る可能性は低く、1月は8割の確率で米ドル高で終わる見通しになります。
「1年の計は元旦にあり」ということわざがありますが、それと似たような金融市場の言い回しとして、1年の相場は1月で決まるといった意味の「1月効果」という考え方があります。
それを米ドル/円に当てはめると、1月相場は1月第1週で決まるといった「米ドル/円の1月第1週効果」ということになるのかもしれません。
■FRBにとっても米国の失業率の改善はサプライズだった
それでも、2010年12月の雇用統計の結果は期待はずれで、そんな経験則は今回、はずれるかもしれないと思っている方もいらっしゃるでしょうか?
ただ、NFPは事前予想より悪かったものの、失業率に対する評価は正反対で、FRB(米連邦準備制度理事会)のメンバーもビックリの良い結果だったのです。
今回発表された2010年12月の失業率は、前月の9.8%から9.4%へと大きく低下し、大幅改善となりました。
FRBのメンバーは、この2010年12月の失業率をどのように予想していたでしょうか?
FRBのメンバーはエコノミストではないので、毎月の失業率の予想を公表していません。ただし、年末時点の失業率については、年に数回「見通し」として公表しています。
その2010年末時点における失業率の見通しの中心は、2010年6月開催のFOMC(米連邦公開市場委員会)での公表ベースでは9.2~9.5%でした。
さすがFRB、2010年12月に失業率が9.4%になることを半年前から的中させていたということになるでしょうか?
しかし、残念なことに、昨年11月に開かれたFOMCの会合で、この見通しは修正され、2010年末の失業率見通しの中心を9.5~9.7%に変更したのでした。
変更直後に発表された2010年12月の失業率が9.4%だったわけですから、FRBはさっそく、失業率の予想をはずしてしまったのです。
つまり、米国の失業率は、FRBの予想を超えるような急改善を見せているのです。
毎月の景気指標は振れやすいものですから、1回の結果だけではまだよくわかりませんが、失業率こそFRBの金融政策への影響が大きく、米国の利上げへの転換のカギを握るものだけに、注目されるところでしょう。
■失業率が9%以下になりそうになったなら、米利上げへ
失業率と米国の政策金利である「FFレート」を、それぞれ少し加工した上で重ねてみたものですが、これを見ると、失業率はほとんどFFレートそのものです。
ただ、最近はFFレートと失業率の関係が大きく崩れています。これは基本的に、政策金利をマイナスにできないからです。
逆に言えば…
FRBは、大幅なマイナス金利にする代わりに、「QE」と呼ばれる量的緩和などを行っています。
そのような量的緩和がなければ、本来利上げができるようになるためには失業率が2%程度、大幅に下がる必要があることも、このグラフは教えてくれています。
ただし現実的には、「QEもやっているから、失業率が2%下がらなくても、せいぜい9%まで下がったら利上げができる」というのが、FRBの金融政策などを分析する専門家「FEDウォッチャー」と呼ばれる人々の一般的な見方です。
今回、9.4%まで失業率が急低下したことで、利上げの最低条件とも言える失業率9%がかなり近くなってきました。
ちなみに、FRBは2011年末時点の失業率見通しの中心を8.9~9.1%としていましたが、前述のように、2010年末時点ですでに、予想以上に失業率が改善している可能性が出てきたのです。
今後、2011年末の失業率見通しも修正され、今年中に失業率が9%以下になってくるとの見通しになるようならば、それは「年内利上げ想定」といった意味にもなるのです。
■最近の欧州財政危機に対する懸念の急拡大は気になる…
今回のコラムでは、米ドル/円の「1月第1週効果」とFRBの「失業率サプライズ」を中心に述べてきました。
私のお話は、結論が単純化されているものの、中身は専門的で決して平易ではないのに、とても多く閲覧いただいているようです。FX投資家のみなさんの知的な成長のために少しでも役立っているのがうれしいので、最後にユーロについても書きます。
ユーロは年明け早々、大幅安となりました。1月は最もユーロ安になりやすい傾向があるので、まさに経験則どおりと言えます。
ただ、ちょっと気になるのは、ここ数日の欧州財政危機に対する懸念の急拡大です。
欧州全体の信用リスクを示す欧州CDS指数です。これを見ると、昨年11月末まで欧州への懸念は再拡大していましたが、その後は緩やかに改善に向い、年末年始には、懸念はかなり後退しました。中国などのユーロ圏支援の影響もあったと思います。
ところが、直近で急速に悪化しているのです。
欧州財政危機によるユーロ安は米ドル高をもたらしますが、それが世界的なリスク回避につながると、ユーロ圏の中核であるドイツの金利が低下し、米国の金利も低下するため、欧米金利差は大きく変化せず、必ずしも積極的な米ドル買いとはなりません。
ただ、欧州への懸念が限定的で、世界的なリスク回避につながらなければ、ドイツの金利が低下する一方で、米国の金利は下がりません。そのため、欧米金利差のドル優位拡大で積極的な米ドル買いが進み、米ドルは全面高となる可能性が出てきます。
このように見てくると、全面的な米ドル高か、それとも限定的な米ドル高なのかを考える上で、ここ数日の欧州の信用リスク急悪化がこの先どうなるかが、1つのポイントになると思います。
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