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【2011年の相場見通し(2)】ユーロは1.1ドル&100円へ!豪ドルは20%超の急反落も!

年間予想の結論から述べると、次のようになります。

(1)ユーロについては、ユーロ安が再燃して昨年安値の1.18ドルを更新していく
(2)豪ドルについては、80円以上の割高圏を推移している中では1カ月間に20%程度の反落リスクを注意する必要がある


それでは、このように考える根拠を説明したいと思います。

■なぜ、ユーロ危機は昨年一息ついたのか?
まずは、ユーロについてです。

2010年は、ギリシャに端を発した欧州財政危機を受けてユーロが急落し、「ユーロ危機」と呼ばれる動きが広がった年でした。ユーロは対米ドルで一時1.2ドル割れまで急落したのです。

ところが、昨年6月にユーロは反発に転じ、11月にかけて1.4ドルを大きく上回るまで上昇しました。これにより、欧州財政危機でユーロが急落するリスクは一巡したのでしょうか?

それを考える前に、そもそも、なぜ昨年6月に欧州財政危機を受けたユーロ危機が一段落したのか振り返ってみましょう。

欧州財政危機は簡単には解決できないとされながらも、ユーロ安が一巡して反発に転じたのですが、その理由をひと言で言えば、ユーロ安もユーロ売りも「行き過ぎの限界」に達したためだと思っています。

■昨年5~6月は前代未聞のユーロ「売られ過ぎ」だった
ユーロ/米ドルの90日移動平均線からのカイ離率は、経験的にマイナス10%が「下がり過ぎ」の限界圏と言えそうですが、まさに、このカイ離率が昨年6月にマイナス10%まで拡大していたのです。

その意味では、「下がり過ぎ」の限界に達したために「ユーロ危機」と呼ばれたユーロ下落が一段落したということでしょう。

ユーロのポジションですが、昨年5~6月には10万枚以上の売り越しとなっていたことがわかるでしょう。それはかつてないほど売り越しが異常に拡大した状況でした。

それまでは、たとえば2008年9月のリーマン・ショック前後に4万枚まで売り越し拡大となったのが最高だったのです。それが、昨年5~6月には10万枚以上に売り越しが拡大していたのです。

■ユーロ安の行き過ぎが、最近にかけて修正されたが…
それほど、欧州財政危機に伴う「ユーロ危機」と呼ばれたユーロ売りが前代未聞で展開されたということになりますが、別の言い方をすれば、「異常」だったのでしょう。

欧州財政危機はギリシャに端を発し、その後、欧州の他の国にも懸念が広がりました。

「危ない国」の頭文字をとって「PIIGS(ポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペイン)」と言われるほど、この5つの国の財政悪化懸念が取りざたされ、簡単には解決しない根深い問題との見方がほぼ定説となりました。

それにもかかわらずユーロ安が一服したのは、これまで見てきたように、「下がり過ぎ」で、異常な「売られ過ぎ」となり、その修正が必要になったからということでしょう。

ところで、ユーロ安、ユーロ売りの行き過ぎが、最近にかけて修正されたことがわかります。

前述したように、欧州財政問題が根深い問題なのに、ユーロ安が一段落したのは、予想以上に早く欧州財政問題が解決したためではありません。単に、ユーロ安もユーロ売りも行き過ぎとなっていて、いったんその行き過ぎを調整しなければ、持続が困難になったためだと思います。

そうであれば、行き過ぎの調整が一段落すれば、欧州財政問題自体が解決したわけではないので、ユーロに再び下落リスクが再燃すると考えるのが自然ではないでしょうか?

■「悪いユーロ安」が進み、ユーロはパリティを割り込む!
これについて、ちょっと違った角度から考えてみましょう。ユーロの適正水準との関係ということです。

ここ数年のユーロは適正水準を上回っています。つまり、割高圏での推移が続いていました。

ちなみに、ユーロ/米ドルの購買力平価は直近で1.2ドル程度ですから、1.4ドルを超えるような水準は、適正レベルよりも相当なユーロ割高になっていたということなのです。

その意味では、「ユーロ危機」と呼ばれた1.2ドル割れへのユーロ急落は、むしろユーロの割高が是正され、適正水準まで戻ってきたということになります。

「ユーロ危機」という言葉は、適正な水準よりユーロが割安になる、いわゆる「悪いユーロ安」ということを意味するのだと思いますが、購買力平価から見れば、じつは「悪いユーロ安」はまだ起こっていなかったのです。

欧州財政問題が解決していないのなら、これからそんな局面へと移っていく可能性があるでしょう。

かつてユーロは適正水準の購買力平価を2~3割も下回った状況があったことがわかります。欧州財政問題が解決するまでは、今回も適正水準を大きく下回ってユーロが下落する可能性は十分にあるでしょう。

ちなみに、1.2ドルを2割下回ると0.96ドルという計算になります。

「1ユーロ=1ドル」を「パリティ」と言いますが、パリティをも割り込むユーロ安になる可能性は十分にあると思います。

■ユーロ/円が100円を割り込み、90円になる可能性も
それでは、ユーロ/円で同じことを考えてみましょう。

昨年のユーロ下落は、ユーロの割高が是正されて適正水準に戻った動きだったと言えるでしょう。

ユーロ/円の購買力平価は直近で112円程度で、かつてはそれを2~3割下回ったこともありました。

欧州財政問題が解決せず、本当の意味で「ユーロ危機」が続くなら、今回もその程度、購買力平価を下回るユーロ安になる可能性はあるでしょう。

仮に、購買力平価を2割下回るならば90円になります。

つまり、ユーロ安、ユーロ売りの行き過ぎ修正が一段落したら、基本的には100円を割り込むようなユーロ安に向かっていくと思います。

■2011年のユーロの下値は1.1~1.15ドル程度か?
金融市場では、ユーロ安になると「やはり欧州財政危機は何も変わっていない」といった声が大きくなり、その半面、ユーロ高になるとそのような声が低くなる傾向があるようです。

もちろん、ユーロの水準が、欧州財政問題を正確に評価しているわけではありません。

欧州財政問題を見る上で、欧州に対する信用を示す代表的な指標として「欧州CDS指数」を見てみましょう。

これをみると、欧州の信用が最も悪化したのは昨年6月で、その後は信用改善が進んできたことがわかりますが、それでも2010年初め頃の信用回復にはほど遠い状況にあります。

つまり、財政危機を受けた欧州の信用悪化は依然として厳しく、状況は大きく変わっていないということでしょう。

一方で、米国の信用は、1年前の水準である2010年初め頃までほぼ戻ってきました。

本来は関係ないはずなのに、欧州の信用悪化に引っ張られる形で悪化した米国の信用は、さすがにここに来て「欧州離れ」が進み、ほぼ元の水準まで信用を回復してきたのです。

「ユーロ危機」と言っても、米国も含めて世界中でリスク回避が一緒に進めば、金利差は大きく変わりません。したがって、ユーロだけが一方的に売られることは基本的にないでしょう。

しかし、欧州でリスク回避が進んでも世界的にリスク回避とならなければ、金利差はユーロ不利が拡大し、よりユーロは売られやすいことになると思います。

このように考えると、2011年もユーロ安の流れは変わらないと思います。

ユーロ/米ドルの値幅を月間・年間について調べたものですが、ここ数年のユーロ/米ドルが年間で3000ポイント前後、米ドル/円で言えば30円程度の値幅で動く大相場が続いていたことがわかります。

この2011年のユーロ/米ドルも3000ポイントの値幅で動くと想定し、しかも、ユーロ安の流れは変わらないとします。昨年のユーロの上限1.4~1.45ドルが今年も上値になると思いますので、ユーロの下値は1.1~1.15ドル程度まで想定する必要がありそうです。

■割高な豪ドルが急落する「条件」とは?
さて、続いて豪ドルについて考えてみたいと思います。

まずは購買力平価との関係を点検してみましょう。これを見ると、80円を大きく上回る豪ドル高は、適正水準である購買力平価よりも10%を大きく上回る割高になっていることがわかります。

このように、近年は豪ドルが購買力平価より10%以上の割高になるケースが増えており、昨年、2010年は一時2割近くまで豪ドル割高が拡大し、それどころか、2008年には3割もの割高となっていたのです。

この背景には、世界経済のけん引役を先進国だけでなく新興国が担うことへの要請と、そういった中でのコモディティー、資源価格の上昇といった構造変化の影響もあると思います。

その中で、代表的な資源国通貨である豪ドルは割高が拡大しやすくなっているということでしょう。

ただし、昨年も、そして2008年も、豪ドルの割高拡大が一巡した後に一転して急反落に襲われるということがありました。その意味では、豪ドルが割高圏で推移している中では、反落リスクを抱えていることもつねに頭に入れておく必要があると思います。

■豪ドル急落の代表的なケースを検証してみると…
それでは、2割程度以上まで大幅に割高となった豪ドルが、1カ月程度の短期間に2割程度も急反落したケースを検証し、どのような共通点があったのかを考えてみましょう。

これに当てはまるのは、2008年7月以降と2010年5月以降の豪ドル急落が代表的なケースでしょう。

この2つのケースに共通していたのは豪ドルの「買われ過ぎ」でした。

経験的に、豪ドルは買い越しが6万枚以上になると「行き過ぎた豪ドル買い」で、反動が大きくなりやすいようです。

2008年と2010年の2つのケースとも、豪ドルが急落に向かった時は、豪ドルの買い越しが6万枚以上となっており、「買われ過ぎ」の反動が入りやすくなっていました。

■20年前の日本に類似! 中国バブル破裂のXデーは?
大幅に割高で、しかも「買われ過ぎ」になっていた豪ドルは、2008年にはリーマン・ショック、2010年には日本のゴールデンウィーク明けのパニック相場に巻き込まれる形で急落に向かったのです。

ただ、当面パニックが起こらなければ、豪ドルの割高修正は限定的にとどまると思います。けれど、私はパニックのリスクとして、中国のバブル破裂の可能性に注意すべきではないかと思っています。

中国は昨年から、資産インフレと不動産バブルへの対策として金融引き締めを急加速しています。これは20年ほど前の日本のバブル破裂前夜と似ている面がありますので、予断が許せないのではないでしょうか?

20年ほど前に日本でバブル発生し、そして破裂したのは、元をたどれば1987年10月のブラックマンデー、世界同時株暴落があったと思います。

当時、世界経済のアンカー役が期待された日本は、金融引き締めへの転換が後手に回り、バブル発生、そしてクラッシュに追い込まれたということでしょう。

2008年9月のリーマン・ショックに起因した世界中の景気低迷において、アンカー役が期待されたのは中国でした。

その中国が、20年前の日本のように引き締めへの転換に遅れた結果が、最近のバブル発生の一因だと思います。あとは、日本のようにクラッシュ、バブル破裂にいたったところまで同じになってしまうのかということです。

日本のバブル破裂は、ブラックマンデーの27カ月後に始まりました。

それでは、リーマン・ショックの27カ月後がいつになるかと言えば、2010年末~2011年初めになります。

20年の時を隔てて似ている日本と中国ですが、バブル破裂まで似たような展開になってしまうのか、まさに試されるタイミングに入っていると思います。

そして、それは豪ドルの割高修正がいつ、どの程度のものになるかも大きく左右するポイントだと思います。

今回のコラムでは、ユーロと豪ドルの2011年の見通しについて述べてきましたが、以上のような理由から、冒頭にお話ししたように、ユーロは対米ドルでも対円でも昨年安値を更新し、1.1ドル、100円を目指すと考えています。

また、豪ドルの80円以上は割高圏で2割程度の反落リスクを警戒する必要があると思っています。

■先週のユーロ急騰、「影の主役」は原油だった!
最後に、先週のユーロ急反騰について、ひと言触れたいと思います。

ユーロ急反騰を引き起こしたキーワードを1つだけ選ぶならば、「原油」だと私は思います。

2008年7月に、ECB(欧州中央銀行)はこれまでのところでは「最後の利上げ」に踏み切りました。2008年9月、リーマン・ショックのたった2カ月前に利上げを決断させた理由は、当時150ドルに向かっていた原油高を受けたインフレ懸念でした。

さて、その原油価格(WTI原油価格)は足元においても100ドルの大台突破が視野に入り始めました。

2度の世界大戦敗戦の後、猛烈なインフレに苦しんだために「インフレファイター」が骨の髄までしみ込んだドイツ連銀、BUBAの流れをくむECBなので、欧州財政危機が続く中での利上げはあり得ないと高をくくることはできません。

1月13日(木)のECB会合後のトリシェ総裁発言で、金融市場は上記のことを思い出し、金利急騰、ユーロ急騰となったのでしょう。

ただし、原油価格が100ドルを超えていくかはまだわからないし、実際に年内利上げを織り込む動きにはなっていません。その意味では、今回のユーロ買いは過剰反応の可能性すらあるし、一段と広がる可能性は低いと私は思います。

そして、もう1つのポイントは「ユーロはよく動く」ということです。

レンジ相場にはなかなかならず、最低でも一方向に500ポイント程度のトレンドを伴った動きになるのがユーロの最近の特徴です。

「よく動く」ということ、それも一方向に大きく動くということは決して悪い話ではないと思いますが、米ドル/円に象徴されるように、小動き、レンジ相場に慣れた頭を切り替えるのは簡単ではないのかもしれません。

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