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ドル/円4カ月ぶり安値付近、代替法案採決注視し小動き=NY市場

[ニューヨーク 23日 ロイター]
終盤のニューヨーク外為市場では、ドルが対円で4カ月ぶりの安値水準付近で推移した。トランプ米大統領が今後、税制改革などの主要政策を実行できるかを示す試金石とされる医療保険制度改革(オバマケア)代替法案の下院での採決に注目が集まる中、値動きは比較的小幅にとどまった。

ドル/円は一時110.64円まで下落したが、やや持ち直し110円後半で取引された。

主要6通貨に対するドル指数はおおむね横ばいの99.757。

オバマケアの見直しはトランプ氏の掲げる主要政策の一つ。

他の市場と同様に、外為市場でも「(代替法案の動向は)今日の取引の大きな焦点」(USバンクのプライベート顧客グループのビル・ノージー最高投資責任者)だった。

クレディ・スイスの為替ストラテジスト、アルバイズ・マリノ氏は、下院が代替法案を可決しない場合は「ドルに対してマイナスに作用し、リスク投資全般に対してもいくらか抑制方向に働く」との見方を示していた。

その後、下院は、代替法案に共和党議員の間で十分な支持を確保できなかったため、採決を延期した。

ポンド/ドルは約1カ月ぶりの高値をつけた。英小売売上高が市場予想を大きく上回ったことを受け、英国の欧州連合(EU)離脱に向けて消費意欲が低下しているのではないかとの懸念が後退した。

堅調な経済指標から、イングランド銀行(中央銀行)が来年、少なくとも1度は利上げできるかもしれないとの観測が強まったこともポンドの上昇を後押しした。


米下院、オバマケア代替法案の採決を延期 共和党内の説得進まず

[ワシントン 23日 ロイター]
米下院は23日、医療保険制度改革(オバマケア)代替法案の採決を延期した。トランプ大統領は、同法案に懐疑的な共和党議員を十分に説得できなかった格好だ。

23日は民主党のオバマ前大統領が7年前にオバマケア法案に署名し、成立させた日でもあり、トランプ大統領と共和党指導部はこの日の採決でオバマケア見直しを決定づけ、共和党の勝利を強調する狙いだった。

下院のオバマケア代替法案には、保険未加入者への罰金廃止や、メディケイド(低所得者向け公的医療保険)の予算縮小などが盛り込まれている。

共和党の保守派は、代替案はオバマケアと大差なく不十分だと批判。同党の穏健派は、国民にとって厳しすぎる内容だとの見方を示している。

採決延期を受け、下院のライアン議長と共和党指導部は法案を修正し、採決に持ち込むための手段を引き続き検討するとみられる。

金融市場はオバマケア代替法案の採決について、トランプ大統領が議会と協力し、減税やインフラ支出などの政策課題を実現できるかどうかの試金石として注目していた。

資産運用会社カンバーランド・アドバイザーズの会長兼最高投資責任者(CIO)のデービッド・コトック氏は、採決延期の発表を受け、「市場は好感しない」と指摘。「オバマケア代替法案の遅れは減税の遅れを意味する」とみている。

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ドル下落110円台後半、米成長期待が後退=NY市場

[ニューヨーク 22日 ロイター]
終盤のニューヨーク外為市場では、米国はトランプ政権下で経済が成長するとの期待が後退して円に逃避的な買いが入り、ドル/円が一時110.75円と4カ月ぶりの安値をつけた。

ドルは前週、タカ派色の薄い米連邦公開市場委員会(FOMC)声明を材料に下落したが、今週に入って米国の利上げペースに懐疑的な見方が強まり、一段と売り込まれている。

ドル指数は一時99.547と7週間ぶりの安値をつけた後、終盤は0.12%安の99.698。

ケンブリッジ・グローバル・ペイメンツのグローバルプロダクツ・マーケットストラテジー部門のディレクター、カール・シャモッタ氏によると「トランプ米大統領が自ら掲げた企業寄りのいくつもの政策を実行に移せないとの見方がくすぶっており、市場全体がリスク回避気味になっている」という。

米医療保険制度改革(オバマケア)代替案の採決を23日に控えて、円には逃避的な買いが入った。

シリコン・バレー・バンクのシニア通貨トレーダーのミン・トラン氏は「円はこの2週間、明らかに少し強気になっており、われわれはこの流れが続くとみている」と話した。

ロンドンでは国会議事堂付近で車が歩道に突っ込む襲撃事件が発生。犯人が警官1人に切りつけるなどして、犯人を含む4人が死亡、少なくとも20人が負傷した。

襲撃事件が報じられるとポンド/ドルは一時1.2424ドルまで売り込まれたが、その後持ち直した。

ケンブリッジ・グローバル・ペイメンツのシャモッタ氏は、ロンドンでの襲撃事件も市場の警戒感を強め、投資家が安全資産に逃避する要因になったと指摘した。


揺れる米金融市場:識者はこうみる

[ニューヨーク 22日 ロイター]
米議会での医療保険制度改革(オバマケア)改廃法案の採決を巡り不透明感が増し、足元の金融市場では大統領選以降の「トランプ・ラリー」の調整が続いている。法案が可決されない場合の一段の調整を指摘する声も出ている。

●銀行株に調整、買い時の可能性

<ソラリス・グループの最高投資責任者、ティム・グリスキー氏>

株価の調整が続く場合、銀行株は市場全体を約5.0%アンダーパフォームする可能性がある。ただ歴史的にみると、銀行株は依然高くない。そのことが支援材料となる。

個人的にはトランプ大統領の計画が大失敗に終わるとは考えていない。現在起きているのは、短期的な利食い売りと見通しの修正だろう。後で振り返れば、いまが買い時だったということになる。状況が落ち着く前に相場がさらに下落するかどうかは分からない。ただ、昨年11月8日の水準まで戻るとは思わない。

医療保険制度改革(オバマケア)改廃法案が議会で可決されない場合、株価は5.0%調整される可能性があるが、買い時とみなされるため、下げ幅は限定されるかもしれない。

●猶予期間の終わり、政権に有言実行求める

<RBCグローバル・アセット・マネジメント(シカゴ)の米株トレーディング責任者、ライアン・ラーソン氏>

けさの動きは、あすの(オバマケア改廃法案の)下院採決の結果と、そもそもあす採決が行われるかどうかを巡る不透明感が要因だった。

市場はトランプ大統領に一定の自由裁量余地を与え、政権が話すことに支持を表明していた。

こうした猶予期間は終わりの局面に入り始めており、市場は口先だけでなく、有言実行を求めている。

(オバマケア改廃法案が)あす通過しないリスクを市場が完全に織り込んでいるとは思わない。通過しなければ、昨日の流れがもっと強い形で継続するだろう。

採決が行われず、先送りされたり棚上げされたりするようなことがあれば、下方向にかなり急激かつ急速な反応が見られるだろう。

強気相場が終わったとは思わない。まだ保留の状態だ。

●財政政策実行に懸念、5%調整も

<ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズの米SPDR部門首席投資ストラテジスト、マイケル・アロン氏>

米財政政策課題の実現の時期を巡る懸念が、引き続き相場を動かす主要材料となっている。

下院で23日にも行われるとみられる医療保険制度改革法(オバマケア)改廃法案の採決が状況を大きく左右する。可決されれば、財政政策課題が順調に進んでいるとの一定の安心感が広がり、市場はプラスに反応する可能性がある。

だが、可決されなかった場合、これまで極めて短期間に大きく上昇してきたことを考慮すれば、株価の5.0%の調整もあり得なくはない。オバマケア改廃法案が採決先送りや否決となった場合、税制改革はまだ先の話で、規制緩和やトランプ政権が掲げる他の優先課題の実現はさらに遠いとの見方が広がるだろう。そうなれば、資産価格に5.0%前後の調整が入る可能性がある。

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ドル/円が4カ月ぶり安値、トランプ政権の政策実行に不安=NY市場

[ニューヨーク 21日 ロイター]
終盤のニューヨーク外為市場では、トランプ米政権が迅速に経済政策を実行できないのではないかとの不安が広がり、円に逃避的な買いが入ってドル/円=が一時111.58円と、昨年11月28日以来、約4カ月ぶりの安値を付けた。

ユーロ/ドルEUR=は1.0812ドルに上昇し、2月2日以来の高値となった。

主要6通貨に対するドル指数は2月7日以来、初めて100を割り込んだ。

RBCキャピタル・マーケッツのマネジングディレクター、チャーリー・マケリゴット氏は「現在進行中のドル安は『リフレーション』取引の巻き戻しの始まりを意味している。ドル指数は心理的な節目の100を下回った」と述べた。

米国株は大幅下落し、米国債利回りも3週間ぶりの低水準まで下げた。

ウェルズ・ファーゴの通貨アナリスト、エリック・ネルソン氏は「これらすべての要因が確実に相互作用しており、円を支えている」と話した。

フランス大統領選候補者によるテレビ討論会で、中道系独立候補のマクロン前経財相が極右政党・国民戦線(FN)のルペン党首より優勢との見方が広がったことが、ユーロの支援材料となった。

コモンウェルス・フォーリン・エクスチェンジの首席市場アナリスト、オマール・エジナー氏は「来月のフランス大統領選まで、ルペン氏が勝利するリスクの低下を示すニュースが出るたびにユーロは支えられるだろう」と述べた。

バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチの通貨ストラテジスト、ミリア・キリアコウ氏はノートで、米大統領選でトランプ氏が勝利し、減税とインフラ投資を約束して以来のドル買いが完全に巻き戻された、と指摘した。

先週の米連邦公開市場委員会(FOMC)でハト派的な姿勢が示されて以来、ドルは軟調に推移している。ウェルズ・ファーゴのネルソン氏は「金融政策、あるいは財政政策を巡る期待が大きく変化しない限り、ドル高基調は戻らないだろう」とみている。


米株が急落、トランプ政権の政策実行に不安:識者はこうみる

[21日 ロイター]
21日の米国株式市場は、銀行株を中心に急落。医療保険制度改革(オバマケア)の見直しに時間がかかっていることから、市場が期待する規制緩和や減税をトランプ大統領が公約通り実現できないのではないかとの懸念が広がっている。

●米政権の政策実行に対する不安の表れ

<アリアンツの首席経済アドバイザー、モハメド・エルエリアン氏>

金融株と製造業株主導での株価の見切り売りは、トランプ政権の成長支援策の発表がすぐに政策実行に結びつくことに投資家が自信を失ってきていることを示唆している。

金利やドル相場もこうした懸念を共有しているようだ。

●税制改革や規制緩和の後退織り込む

<スチュワート・フランケルの社長、アンドリュー・フランケル氏>

政治が主役で、市場を動かしている。トランプ政権の成長支援策を期待して上昇していたなら、疑問が生じたときにある程度返上するのはやむ得ない。

あちらこちらで小規模な見切り売りが見られ、見切り売りのモメンタムが強まっている。

48時間後には医療保険制度改革(オバマケア)改廃法案の行方が定まる。賭けをするには頃合いではないか。

きょうはライアン下院議長の発言があった。皆、議長の言葉の裏を読み取ろうとしたと思うが、私には、医療保険制度改革についてやや後退したように聞こえた。

市場は、税制改革や規制緩和にどのような後退が見られるかを織り込もうとしている。

●材料出尽くし、議会が要因に

<テミス・トレーディングのマネジングディレクター、マーク・ケプナー氏>

市場はちょうど材料探しの期間にある。株価が高値にあるとき、ささいな要因で相場は動きやすい。原油安も材料になりつつある。

先週の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、連邦準備理事会(FRB)が一部で期待されていたほどタカ派に傾かなかったことも銀行株の重しとなった。

企業決算やFOMC、雇用統計など材料が出尽くしたところで、市場は議会の動きに注目しだした格好だ。医療保険制度改革(オバマケア)代替案が成立しない場合、政府は税制改革に着手できず、市場が期待していた改革が棚上げされるとの見方が広がっている。手掛かりなしに、株価がさらに上昇するのは難しい。

●株売り債券買いの資産配分

<ジョーンズトレーディングの首席市場ストラテジスト、マイケル・オルーク氏>

金融株は債券市場の上昇を受けて売られている。債券市場は米連邦公開市場委員会(FOMC)以降、上昇基調にある。

けさから、株式を売って米国債を買うという、ある種の資産配分モデルが始まったようだ。

これが下げのきっかけになった。昨年10月以来、(S&P総合500種指数が)1%下落した日がないということもある。

それに加え、23日には医療保険制度改革(オバマケア)改廃法案(の採決)があり、うまく行かなければ大統領の税制計画がとん挫するのは明らかだ。

そのため市場参加者は、少しディフェンシブになって利益確定を出すにはちょうどいいタイミングだと言っているにすぎない。

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今週はドルの上値重い、G20で米国の保護主義を再確認

[東京 22日 ロイター]
今週の外為市場では、週末に行われた20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議で米国の保護主義政策が改めて意識されたため、ドル/円の上値が重くなりそうだ。

米利上げペースが市場期待より緩慢になるとの見方を反映して米10年債利回りは2.46%台まで低下しており、金利面からもドルの支援材料は乏しい。

18日に終わったG20財務相・中央銀行総裁会議の共同声明では「通貨安競争の回避」が引き続き明記されたものの、保護主義反対の文言が米国の反対で盛り込まれず、東京市場が休場だった20日のアジア時間にドルは112.46円まで下落し、3週間ぶり安値をつけた。

今週の予想レンジはドル/円が111.00―113.00円、ユーロ/ドルが1.0700─1.0900ドル。

市場の期待に反してタカ派的ではなかった「前回の米連邦公開市場委員会(FOMC)やG20での保護主義に対抗するとの文言削除などが意識され、ドルの地合いは弱い。目先、113円台に安定的に戻るのは困難だろう」とトウキョウフォレックス上田ハーローの阪井勇蔵氏は言う。

ユーロは前日1.07ドル前半まで下落したが、底堅さを維持している。

ユーロは「オランダの下院選が終わって政治リスクが緩和しているため、これまで積み上げられたユーロ・ショートの巻き戻しが出ている」(大手機関投資家)という。

これでユーロ高/ドル安のトレンドが出きているとは言えないものの、ユーロ買い/ドル売りの流れはもう少し続くとみられている。「ポイントは1.08ドルミドルから1.09ドルの壁を超えていけるかどうかだ」(同)という。

調査会社エラブが公表したフランス大統領選に関する最新の世論調査によると、4月23日に実施される第1回投票で、中道系独立候補のマクロン前経済相の得票率が25.5%と、極右政党・国民戦線(FN)のルペン党首の25%を上回った。マクロン氏がトップになるのは1月以来。

今週の主な予定では、22日には日本の2月貿易収支、日銀金融政策決定会合議事要旨(1月30―31日分)、23日にはイエレンFRB議長の講演、25―26日には石油輸出国機構(OPEC)加盟国・非加盟産油国の協調減産監視委員会の閣僚会合が予定される。

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コラム:日本経済の「春」はいつまで続くか

竹中正治 龍谷大学経済学部教授

[東京 27日]
ドナルド・トランプ氏の米大統領選勝利の直後に私が一番恐れたのは、米国が日本をはじめアジアの同盟国に対する関与を低下させ、それによって生じる地政学的な変化が軍事的な膨張主義を隠そうとしなくなった中国有利に傾くことだった。

しかし、日米関係については安倍晋三首相のアプローチが奏功し、とりあえずは杞憂に終わりそうだ。マティス国防長官に代表される同盟関係を重視する閣僚たちの影響力も、この点でトランプ政権の脱線を食い止める力として働いている。

日本の景気動向も持ち直しの動きが次第に鮮明になってきた。昨年11月に始まった「トランプ相場」と呼ばれるドル高とそれに伴う株価上昇も加わり、日本経済はしばし春の陽気を楽しむ暇ができたと言えるだろう。

ただし、今後4年間を展望すると、2009年を底に始まった米国の景気回復はトランプ政権の後半までには後退局面に転換する可能性が高い。それに伴い日本も再び景気後退と円高・株安となるリスクが高まるだろう。

したがって、私の中期的な投資の基本方針としては、日本株はポートフォリオ上のウエートダウン、ドル建て資産についても為替のヘッジ率の引き上げである。そう考える理由をご説明しよう。

<正規雇用増という雇用環境の改善>

少しさかのぼってみよう。日本経済は14年4月の消費税率引き上げ後、消費の反動減に見舞われた。これはある程度は予想されたことだった。ところが、その反動減が終ったはずの15年から16年にかけても、景気は足踏みに近い状態が続いた。それは内閣府が公表している景気動向指数にくっきりと表れている。

景気動向指数(CI)のうち、先行指数は14年1月にピーク(113.9)を付けた後、100台前半で低迷した。一致指数も14年3月にピーク(114.3)を付けた後、やはり100台後半の推移が続いた。しかし、先行指数は16年9月の101.9から12月には107.7まで上昇、一致指数も同じ期間に108.8から111.4に上昇した。昨年の第4四半期に何が起こったのか。

第1に景気の足踏みが続いたものの、雇用環境の改善が一貫して続いてきたことに注目しておこう。下の図は正規・非正規別の雇用者数の増減(前年同期比)を示したものだ。思い出していただきたい。14年12月の前回総選挙では民主党をはじめ野党から「安倍内閣は雇用を増やしたというが、増えたのは非正規雇用ばかりだ」と批判された。

確かに13―14年は非正規雇用の増加と正規雇用の減少が起こった。ところが、15年から正規雇用も増え始め、16年には増加幅が拡大し、16年10―12月期の正規雇用の増加数は74万人となった。これは同じ形でデータの取れる02年までさかのぼってみても、前回の正規雇用の増加のピークである07年7―9月期の67万人増を超える増加幅だ。

そもそも景気の回復にもかかわらず、なぜ13年前後に正規雇用が減り、非正規雇用が増えたのだろうか。男女別、年齢層別に13―14年の2年間に起こった雇用形態別の雇用者数の増減を見てみよう。

この2年間に最も非正規雇用が前年比で増えたのは、女性では35―44歳の32万人増と45―54歳の24万人増だ。一方、男女合計で非正規雇用の増加が著しいのは65歳以上の年齢層で53万人増だ。以上合計すると90万人の増加で、この時期の非正規雇用160万人増の68%を占めている。

ミドル年齢層の女性の非正規雇用増加は、景気回復で求人増加に応じて主婦層のパート労働などが増えた結果と見て良いだろう。一方、男女合わせて65歳以上の非正規雇用の増加は団塊の世代の定年引退と関係している可能性がある。

つまり、1947―49年生まれの団塊の世代がこの時期にちょうど65歳の定年を迎え、65歳まで正規雇用で残っていた者も正規雇用から抜け落ちると同時に、その後も働くことを希望する人たちがパートや非常勤など非正規雇用で働くことが増えたと考えられる。

一方、13―14年の正規雇用の減少は25―34歳が男女合わせて42万人減と最も多い。この2年間の正規雇用の減少は全体で49万人減だから、この年齢層での減少が最大の原因だ。この若い年齢層で同時期の正規雇用が目立って減少した理由は、私はよく分からないのだが、一般に新卒正規雇用で就職しても「3年で3割辞める」と言われる。リーマン・ショック後の不況下で不本意な就職をした層が転職を志向した際にいったん正規雇用から離脱したのかもしれない。いずれにせよ、この年齢層でも16年からは正規雇用が前年同期比で増加している。

次に労働給与の動向として実質雇用者報酬(雇用者全体の総額)を見ると、16年通年で前年比2.6%の増加となっている。ところが、家計最終消費は、こうした雇用動向と雇用者報酬の改善・増加にもかかわらず、16年通年は前年比で実質0.3%と低い伸びにとどまっている。この所得と消費の増加のかい離は、社会保険料のすう勢的な増加の影響もあるが、それで説明できるのは変化の一部にすぎない。「円安ボーナス期終焉後の日本経済」(16年6月30日付コラム)で書いた通り、横行する過剰な悲観論が自己実現的に招いている閉塞現象ではなかろうか。

この点を理解するために、現在時点と将来時点で所得、消費、貯蓄がどのように変わるか考えてみよう。現在時点よりも将来時点の所得が増加すると人々が期待する場合は、現在時点では借金をしても消費や住宅購入などに積極的になる。銀行貸出が増える分だけマネー供給量も増え、需要増加を伴って物価も上がる。

一方、人々が将来時点の所得が現在時点より減ると予想するならば、現在時点の貯蓄増加(消費減少、借金返済)が起こりやすく、銀行貸出が増えないのでマネー供給量も増えず、消費の増加は所得の増加を下回り、物価も上がり難い。

横行する過剰な悲観論を背景に日本の家計は将来所得の増加に悲観的になってしまったのだろう。この家計の将来所得に関する悲観が、金融政策や財政政策を総動員しても、インフレ率が目標の2%まで上昇しないことの基底にあるのだと思う。

<海外景気の持ち直し>

ともあれ、このように国内雇用環境の改善が途切れなかったことに加えて、新興国を含む世界経済全体が緩やかに回復してきた。各国、各地域の景気動向を概況できる経済協力開発機構(OECD)合成景気動向指数を見てみよう。この指数は各国の景気のすう勢的な水準が100となるように作られている。

先進国であるOECD諸国に中国を含む6つの新興国を加えた合成景気動向指数は、16年1月の99.4を直近の底年に16年10月には99.9にじわりと上がった。11月以降の数値はまだ出ていないが、上昇トレンドが強まっている可能性が高い。すでに17年1月までデータが出ている米国については、同指数は15年12月の99.0から17年1月の100.6まで上がっており、上昇基調が鮮明だ。

こうした海外景気の持ち直しと、トランプ政権による大規模減税やインフラ投資による米国景気の上振れ期待を背景にしたドル高による実質輸出の増加、並びに収益的な改善が足元の日本の景気動向に順風となっている。

実際、ドル円相場と日本の製造業の経常利益は相関関係が高い。11年1―3月から16年7―9月期までの期間(四半期データ)について、製造業の経常利益の変化(前年同期比)をドル円相場の変化(前年同期比)で単回帰分析すると、有意な正の関係性が見られる。相関係数は0.82、説明度を示す決定係数は0.67とかなり高い。これは製造業の経常利益の変化の67%をドル円相場の変化で説明できることを意味する。また、ドル円相場の10%のドル高・円安は製造業の経常利益を約15%増加させることが読み取れる。

法人企業統計で確認できる四半期ベースの全企業部門(除く銀行・保険)の経常利益も15年4―6月期の19.2兆円をピークに16年1―3月期は16.0兆円まで減少したが、16年7―9月期は18.5兆円まで回復しており、この増加傾向は今年に入っても当面継続する可能性が高そうだ。

<国境税でも米国の貿易赤字は縮小しない>

「大胆な金融緩和で消費者物価指数プラス2%」というアベノミクスの目標は、当初2年間と言われた期間が大幅に過ぎた15年末でも未達となった。そのため海外筋が相場観を修正、円買いに転じ「アベノミクス円安」は終焉したわけである。16年11月から始まったのは、米国景気の上振れ期待を背景にドル長期金利上昇と連動した「トランプノミクス・ドル高」である。

ただし注意が必要なのは、完全失業率が4%台後半(17年1月4.8%)まですでに下がった米国経済は、ある程度楽観的に考えても09年から始まった景気回復過程のすでに終盤局面に入り始めていることだ。

例えば失業率は1970年以降の期間で見る限り、4%を割れて下がったことはほとんどない。つまり賃金と物価の上昇が始まり、それに合わせて金利の上昇とドル相場の上昇が最終的に景気後退への転換をもたらす局面がトランプ政権の今後4年間の後半までには到来する可能性が高い。そのことを踏まえて考えてみよう。

まず28日に連邦議会でトランプ大統領が行う予定の演説、あるいは3月前半の予算教書の提出までにかねてより公言されていた税制改革案がある程度具体的に語られると期待されている。法人税関連では現行の35%から20%程度への税率引き下げと並行して、輸入取引に対しては20%税率が課せられ、輸出についてはそれが免除されるという国境税(border tax)の可能性が話題となっている。

国境税に関する米国の主要なエコノミストの見解はすでに随所で語られている。それはドル建ての輸出価格の引き下げ、同じく輸入価格の引き上げを起こす。しかし、一国の対外不均衡については「貿易収支=国内総貯蓄-国内総投資(固定資本形成)+財政収支」という恒等式で示される厳然たる原理がある。国境税自体は恒等式の右辺に変化を生じさせないので、米国の貿易収支赤字を縮小させる効果はないと考えられている。

具体的には、国境税によるドル建ての輸出価格低下、輸入価格上昇は、外為市場でのドル対外貨の需給関係を変化させることでドル相場の上昇を招く。このドル高によって外貨(非ドル)建てに換算された米国の輸出・輸入価格の変化は相殺されてしまうからだ。

国境税は国際通商面では世界貿易機関(WTO)違反の嫌疑を当然招くと同時に、エコノミストの視点ではこうした標準的な経済学の命題がどのように実現されるか観測する絶好の機会でもある。

ただし、現在のドル相場の上昇はすでに国境税導入というシナリオを幾分なりとも織り込んで形成されていると考えられ、20%の国境税イコール今の水準から20%のドル高効果とはならないはずだ。またドル相場の上昇率も通貨ごとに異なるだろう。

そしてトランプ政権が大規模な減税で米国景気の上振れを引き起こすか、あるいは減税案が規模縮小や見送りになるかにかかわらず、昨年10―12月平均並みの実質ドル相場水準が持続するだけで、現状国内総生産(GDP)比率で2%台半ばの米国の経常並びに貿易収支赤字は、今後2―3年で大幅に拡大する可能性が極めて高い。この点は「トランプノミクスと日本の蜜月が終る時」(16年12月21日付コラム)で説明した通りである。もちろん、大規模な減税で景気の上振れが生じた場合には、ドル高も経常・貿易収支赤字の拡大もより程度の大きなものとなる。

米国内のシェールガス・オイルの増産が米国の貿易収支赤字を縮小させるのではないかと考える方もいるかもしれない。確かに米国のエネルギー自給率は過去数年間違いなく高まっているが、それが貿易収支赤字を縮小する効果は見られないのが事実だ。

まだ1―2年先のことになるかもしれないが、米国の貿易赤字は縮小せず、逆に拡大し、ドル長期金利とドル高の影響で雇用改善に陰りが見えて来た時、トランプ政権が対外通商面でさらに「狂暴化」するリスクを念頭に置いておくべきだろう。

果たしてトランプ政権はその時にどのようなアクションを取るだろうか。その具体的な内容を今から予想することは困難であるが、可能性の高いリスクシナリオだ。いずれにせよ、今後4年間のトランプ政権の後半までに起こりそうな米国の景気後退局面への移行に伴って、日本も再び景気後退と円高・株安に転換するリスクが高いだろう。

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原油安が強めるFOMC後の円高観測

日本経済新聞 経済部 中西誠

外国為替市場で、15日の米連邦公開市場委員会(FOMC)後の円高を予想する声が増えている。確実視される昨年12月以来の利上げがすでに織りこまれ、材料出尽くしのドル売りが見込まれるからだけではない。むしろ気になるのは連日の原油安だ。原油価格の下落が続けば、安全通貨の円買いが膨らむ可能性がある。

米経済指標が総じて好内容で、今後の米景気はトランプ米大統領による経済政策で上振れするとの予想が多い。

利上げが確実視される今回のFOMCでは政策金利予測(ドットチャート)が焦点になる。同チャートはメンバーが適切と考える政策金利の誘導目標水準をドット(点)の分布で示したもの。前回までは「今年の利上げが3回」と読み取れ、これが「年4回」に増えるとの観測が出ている。

もっともFOMCの結果がこれらの内容なら「市場はかなり織り込んだので米長期金利が再び上昇基調に入る姿は見えづらい」(あおぞら銀行の諸我晃氏)という。昨秋からの大幅な円安・ドル高をけん引したのは米長期金利の上昇だっただけに「円相場は反動で上昇しやすい」(諸我氏)。

14日の海外市場では原油相場が一時1バレル47ドル程度まで下落して連日で3カ月半ぶりの安値をつけた。サウジアラビアの増産が売りにつながった。最近は50ドル台を維持して新興国など海外経済への前向きな見方を支えていたが、これに強気になった米国のシェールオイル業者が生産を増やす動きもある。さらに原油相場が下値を探る動きとなれば、安全通貨としての円買いが進むシナリオが捨てきれない。

今週は海外イベントが目白押しで、15日はオランダ総選挙、週末は20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議がある。前者については極右政党の得票が目立つ結果が出れば、後者についてはトランプ米政権の姿勢を反映して保護主義への対抗色が薄い声明などとなれば、これらの点からもリスク回避の円買いが進む可能性がある。

足元の円相場は総じて1ドル=115円前後の取引だが、「当面はFOMCの結果に対する反応を軸に112円まで上昇する余地がある」(みずほ証券の山本雅文氏)と見ておきたい。

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円安再点火か 「ドットチャート」が羅針盤に

日本経済新聞 経済部 浜美佐

世界の経済・金融関係者が注目する米連邦公開市場委員会(FOMC)が、きょう14日(米国時間)から始まる。市場では3カ月ぶりの利上げが確実視されているが、イベントを目前に控えた14日の為替市場では、円相場の膠着状態が続いている。FOMCは円安・ドル高の再点火を促すイベントとなるのか。市場参加者の視線は、1つのチャートに集まっている。

■「最後の関門」を超えた利上げ判断

「ドット(点)が重要だ」(野村証券外国為替部の高松弘一エグゼクティブ・ディレクター)。為替市場関係者は、15日まで開かれるFOMCについてこう口をそろえる。

ドットとは、FOMC後に公表される米連邦準備理事会(FRB)幹部による政策金利予測(ドットチャート)のこと。メンバーが適切と考える政策金利の誘導目標の水準がドット(点)の分布で示される。

市場関係者はFOMC後の会見でのFRB議長の発言に加え、ドットチャートに示されたメンバー予想の中央値から利上げ開始時期や年の利上げ回数を予測することが多い。先週公表された米2月雇用統計の強い結果を受け、市場では「利上げに向けた最後の関門を超えた」(外資系証券)との見方が強まっている。

市場参加者の目線は既に利上げの先に向かっている。唯一の道しるべが「ドットチャート」であるだけに、市場の関心が集中するのもうなずける。

昨年12月のFOMC時点のドットチャートでは、FOMCのメンバーである15人のFRB幹部は、2017年は3回の利上げが適切とみていた。市場の一部では、今回公表される最新のドットチャートでこの予測が引き上げられ、利上げペースが加速するとの見方も生じてきている。

■円安か円高か、分かれる見方

「年4回の利上げの可能性は5割以上ある」。JPモルガン・チェース銀行の棚瀬順哉チーフFXストラテジストは13日付のリポートでこう指摘する。17年の利上げ回数が3回から4回に増えるためには、少なくとも4人の委員が予測を引き上げる必要があるが、その可能性は低くないと見込む。

三井住友銀行の佐藤慎介為替トレーディンググループ長は、「仮にドットチャートが利上げペースの加速を示唆した場合、為替市場で円安・ドル高が進行する」とみる。一方、現状の年3回の利上げ見通しが維持された場合、「一旦円高になった後、113~116円のレンジ相場に移る」と予想する。

FOMC後の相場は円安になるのか、それとも円高か。現時点では為替のプロの間でも見方が分かれているからこそ、ドットチャートの示す点の分布が大きな意味を持つ。実際に米政策金利の見通しが切り上がり、日米金利差が拡大するとの思惑が強まれば、円安・ドル高のシナリオが再点火する可能性も十分ありそうだ。

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焦点:G20声明で為替市場に転機か、安定維持の文言削除

[ロンドン 9日 ロイター]
17─18日にドイツで開催される20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の共同声明は、草案の段階で為替相場の安定維持をうたうお決まりの文言が削除された。貿易赤字解消のためドル安を望むトランプ新政権の真意を映したとみられ、このままの形で採択されれば為替市場に転機をもたらすかもしれない。

ロイターが入手した草案は、昨年の声明に盛り込まれた為替相場の「過度のボラティリティー」や「無秩序」な動きへの言及が抜け落ち、「競争的な通貨切り下げ」を回避するとの言い回しも削除された。

一方で「行き過ぎた世界的な不均衡」という文言が約10年ぶりに復活。多額の貿易黒字を抱えるドイツや中国を狙い撃ちにしているのは明白だ。

こうした文言の修正からは、米政府が内心では根強い貿易赤字や製造業凋落の原因とされるドル高に苛立ちを感じていると読み取れそうだ。

通貨戦争はだれも望んでおらず、「過度のボラティリティー」などの文言が最終的に復活することもあり得る。ただ、最終的に声明が草案に近い形になれば、トランプ米政権が為替や貿易に影響力を行使していることを示す明白な証拠となる。

バンク・オブ・ニューヨーク・メロンのグローバル金利ヘッドのサイモン・デリック氏は「過去においてG7やG20の声明文は、具体的な行動を正当化したり、はっきりとした警告を送るのに利用されてきた。声明の文言が為替政策の変数であるならば、文言の変化は重大な意味を持つ」と指摘する。

デリック氏によれば、2003年のドバイ会合の声明が為替レートの「柔軟性」に言及し、04年のボカラトン会合で「経常収支の世界的な不均衡」という文言が入ると、日本は04年に円売りの市場介入を中止した。

G20加盟国は自国通貨高を望んでいないが、貿易が国際政治の課題に返り咲いたこのタイミングで「世界的な不均衡」という文言がG20声明に復活するのは、「明らかに強いメッセージを送ることを意図している」と同氏はみる。

G20の政府高官は、外為市場にどのようなシグナルを発するかについてまだ協議が続いていると述べた。その上で「どのようなものに」なるにせよ、絶対に市場に誤解されないようにしたい」と語った。

トランプ新政権は、為替相場を操作して自国製品の競争力を高めているとして、米国の主要貿易相手国5カ国のうち日本、中国、ドイツの3カ国を非難し、為替市場のボラティリティが高まった。ドル指数は1月に14年ぶりの高値をつけ、外為ストラテジストを対象としたロイターの調査では今後1年間にさらにドル高が進むと予想されている。

ムニューシン米財務長官は、強いドルは国益にかなうという従来からの米国の主張を繰り返し表明しているものの、短期的には「プラスではない部分がある」と警告。国際通貨基金(IMF)のラガルド専務理事に対し、為替レート政策について「率直な」分析を行うよう期待すると述べている。

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2月米雇用は23.5万人増、来週の利上げ後押しか

[ワシントン 10日 ロイター]
米労働省が発表した2月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が23万5000人増と、市場予想の19万人増を上回った。賃金も伸びを示し、連邦準備理事会(FRB)による来週の利上げを後押ししそうだ。

季節はずれの温暖な天候となったことを受け、建設業の雇用者数が5万8000人増と、2007年3月以来約10年ぶりの大きな伸びを記録した。前回12、1月分の雇用者数の伸びは9000人上方修正された。

イエレンFRB議長は前週、来週14-15日の連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げを行う可能性を示唆している。雇用者数は過去3カ月間、毎月20万9000人のペースで増加しているが、労働年齢人口の増加を吸収するのに必要な雇用者数の伸びは毎月10万人程度とされる。

RBCキャピタルマーケッツ(ニューヨーク)の首席米国エコノミスト、トム・ポルチェリ氏は「今回の統計内容は非常に健全な労働状況と一致しており、FRBによる3月利上げへの弾みとなるだろう」と述べた。

時間当たり平均賃金は前月比0.2%(6セント)増えた。市場予想は0.3%上昇だった。1月分の伸び率は前回発表の0.1%から0.2%に上方修正された。前年比の伸びは2.8%で、前月の2.6%から拡大した。エコノミストの試算では、FRBが掲げる2%の物価目標の達成に必要な賃金の伸びは3.0-3.5%とされる。

労働参加率の上昇にかかわらず、失業率は4.7%と、前月の4.8%から0.1%ポイント改善した。労働参加率は0.1%ポイント上昇し63%と、2016年3月以来の高水準。就業率も0.1%ポイント上昇の60%で、2009年2月以来の高水準を記録した。

縁辺労働者や正社員を希望しつつもパートタイムで就業している人を加えた、より広義のU6失業率は9.2%と、前月から0.2%ポイント低下した。

業種別での雇用者数は、製造業が2万8000人増加し、2013年8月以来の高い伸び。石油価格の値上がりで機械関連の需要が好調だった。

一方、小売りは2万6000人減少し、2012年12月以来の大幅な落ち込み。前月は3万9900人増加していた。百貨店のJCペニー(JCP.N)やメーシーズ(M.N)などは、実店舗業務の縮小とネット通販業務の拡大に伴い、これまでに数千人規模のレイオフを発表している。

その他、公益は1000人減。政府関連は8000人増加した。


米雇用統計:識者はこうみる

[10日 ロイター]
米労働省が発表した2月の雇用統計は、非農業部門雇用者数が23万5000人増と、市場予想の19万人増を上回った。

賃金も底堅い伸びを示し、連邦準備理事会(FRB)による来週の利上げを後押ししそうだ。

市場関係者のコメントは以下の通り。

●3月利上げ後押し、潜在的な賃金圧力は存在

<RBCキャピタル・マーケッツの首席米国エコノミスト、トム・ポーチェリ氏>

非常に堅調な結果だ。健全な労働市場の状況を示し、3月の利上げを後押しする内容となった。2月の賃金の伸びはやや精彩を欠いたが、1月分が上方修正されたことは朗報だ。現時点で賃金のスラック(緩み)は著しく縮小し、年内を通じ賃金押し上げの一助になるとみられることから、潜在的な賃金圧力は存在する。

●全般的に強弱まちまち

<シュワブ金融調査センター(ニューヨーク)の首席債券ストラテジスト、キャシー・ジョーンズ氏>

全般的には強弱まちまちの内容だったといえる。市場はかなり強い数字を織り込んでいた。時間当たり平均賃金の伸びは予想を下回ったため、失望した投資家もいたかもしれない。ただ底堅い統計であることに変わりはなく、米連邦準備理事会(FRB)は今後利上げを推し進める見通しだ。来週の利上げは確実だろう。

●現在の雇用増は持続困難、すでに引き締まり

<アメリプライズ・ファイナンシャル・サービシズのシニアエコノミスト、ラッセル・プライス氏>

経済活動が底堅さを増し、信頼感水準も高まり、良好な気候となった。すべての要因が、年初から雇用増を押し上げたようだ。建設業の新規雇用が急増したことが示すように、天候の改善に伴う(雇用の)伸びは(この先の)増加が前倒ししたことを反映した公算が大きく、春にかけて幾分の調整がみられる可能性がある。

労働市場はすでにかなり引き締まっている。参加率の上昇にみられるように、労働市場の改善に伴って、求職活動をやめていた人が市場に戻りつつあるが、現在の雇用増ペースは持続不可能とみられる。

●失業率低下・労働参加率上昇はプラス

<ウェルズ・ファーゴ・インベストメント・インスティチュートのグローバルクォンティタティブ・テクニカルストラテジストのサミール・サマナ氏>

ADP全米雇用報告が大幅増になっていたため、さほど驚きはない。

労働市場の回復の裾野が広がっているという点で、失業率が下がる一方、労働参加率が上昇していることは勇気付けられる兆候だ。

市場は(3月)利上げを確実視しており、米連邦準備理事会(FRB)を阻むものはない。それでも年内は3月、9月の2度の利上げを見込んでいる。ただ12月の可能性は排除しない。

個人消費支出(PCE)価格指数が2%を下回っている限り、FRBは利上げに慎重姿勢で臨む。2.1%、または2.2%を上抜ければ、雇用よりも物価安定を強調すべき時期に来たと考えるだろう。

●賃金増なお精彩欠く、年内4度の利上げ予想は早計

<ウェスタン・ユニオン・ビジネス・ソリューションズのシニア市場アナリスト、ジョー・マニンボ氏>

非常に力強い内容だが、市場の期待が事前に大きく高まっていたため、ドルは上昇できなかった。賃金の伸びはなお鈍く、利上げペースが加速するとの見方を後退させる。

今回の統計を受けて3月利上げはほぼ確実だが、年内3度を上回る利上げとの予想はやや早計だ。

●製造業の伸び注目、トランプノミクスは本物か

<フェデレーテッド・インベスターズのチーフ株式市場ストラテジスト、フィル・オーランド氏>

注目点の1つは大幅な伸びとなった製造業だ。また賃金も増加している。米連邦準備理事会(FRB)にとってはこの上ない内容で、来週の利上げは決まりだろう。

これを見込んで株式市場は過去4カ月に15%値上がりしており、「トランプノミクス」には一定の妥当性があるとの認識が出始めるかもしれない。

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コラム:円高派と円安派、年末に笑うのはどちらか

尾河眞樹 ソニーフィナンシャルホールディングス 執行役員・金融市場調査部長

[東京 22日]
先日、都内の某所で行われたセミナーで、筆者も懇意にさせていただいている2人の為替ストラテジストが、2017年の為替相場見通しを語った。興味深かったのは、2人の見通しが真逆だったことだ。

ドル円の年末予想値は120円と99円に割れた。ただ、為替の場合、ここまで大きく予想が割れるのは珍しいことではない。為替を動かす材料は多岐にわたっており、根拠の軸をどこに置くかで予想値は全く変わってくるからだ。

同セミナーに登壇した2人の場合、円安派は米国のインフレ加速と日米の金利差拡大に、円高派はトランプ米政権の保護主義や欧州の政治リスクに力点を置いていたが、いずれもロジックがしっかりしており、さすがに「なるほど」と唸(うな)る非の打ちどころのない内容だった。

「金利差」なのか「政治リスク」なのか、どちらが色濃く相場に反映されるかで年末のドル円レートは大きく異なる。足元、ドル円が112―113円台という、極めて「中途半端」な水準で膠着(こうちゃく)しているのは、現段階ではこのいずれも実現する可能性がそれなりに高いからだろう。

市場参加者の中には115円を先に上抜けるという予想と、110円を先に割り込むという予想が混在しており、これによって相場もその中間点で綱引きになっているのだ。

<持ち合い相場はいつ崩れるか>

米株価とドル円相場のグラフを重ねると、株と為替で、市場によっても見通しが割れていることが如実に表れている。昨年11月の米大統領選後に、トランプ政権の財政政策への期待から、トランプラリーが起こり、米株価とドル円はパラレルに上昇した。しかし、今年1月20日のトランプ大統領就任式以降、米株価とドル円の相関性は崩れた。

大統領就任演説やその後の円安批判など、トランプ政権の保護主義が前面に出たことが背景だ。トランプノミクスによる米景気拡大への期待から米株価は連日高値更新となる一方で、「米保護主義=ドル安政策」を意識した為替市場ではドル円がずるずると下落した。株式市場と為替市場では、トランプノミクスの注目ポイントも異なるし、おのずと反応も違ってくるのだ。

ただ、こうした市場のゆがみはいずれ修正され、ドル円の持ち合い相場も崩れるときが来るだろう。タイミングとしては、3月上旬が有力だ。ドル円は日足一目均衡表の雲(109.96円から115.30円)に入って2月23日でちょうど1カ月となる。この間、概ね111―115円のレンジ相場が続いてきたが、3月上旬になると、この雲が114円台半ば付近でねじれるポイントがある。その頃はちょうどトランプ政権の税制改革案が発表されるタイミング(トランプ大統領の発言によれば3月上旬が期限)と重なるのだ。

おそらくこの税制改革案を市場がどう評価するかが、111―115円の持ち合いから上下どちらに抜けるかの分かれ目となろう。トランプ大統領は2月9日に、米国の航空会社幹部との会合で、「驚異的な」法人税制改革の計画を2―3週間以内に発表すると述べた。

この「驚異的」発言で事前に大型減税への期待が高まっただけに、減税が予想外に小規模にとどまった場合には、失望感から円高に振れるのではないかとの見方もあるが、トランプ大統領のこうしたリップサービスや気まぐれな発言を、果たして市場参加者がどの程度真剣にとらえているかと言えば、もともと期待値はさほど高くないはずだ。

それよりも、ムニューシン米財務長官の就任によって、財政政策の策定が進み、予算教書が議会に提出される流れとなれば、これらが米経済を押し上げるとの安心感につながり、米国の長期金利が上昇する中、ドル円はじわり115円を上抜ける可能性が高いとみている。

<元高が招く円高リスク>

ただし、その後も一直線に120円を目指す展開になるかと言えば、まだ紆余曲折がありそうだ。冒頭に記載した円安派の「日米金利差拡大」か、円高派の「政治リスク」かで言うと、4―5月にかけては円高派が主張する「政治リスク」が目白押しだ。

まずは4月中に、米財務省が議会に対して「為替報告書」を提出する。最大の注目は、トランプ大統領の選挙中の公約通りに、米政府が中国を「為替操作国」に認定するかどうかだ。ムニューシン米財務長官が2月13日に就任してから、早速、中国の汪洋副首相、ハモンド英財務相、麻生太郎財務相、ショイブレ独財務相らと相次いで電話会談するなど積極的に外交を行う中で、いくら選挙公約とはいえ、中国が4月に為替操作国に認定される可能性は低いだろう。

加えて中国当局はこれまで資本流出に歯止めをかけるために、むしろ人民元買い介入を行っていたのであり、このために中国の外貨準備は急速に減少している。為替を「操作」していることは確かだが、自国通貨安誘導の介入ではないため、これをもって「為替操作国」に認定するのは無理があろう。

もちろん、一部海外メディアでは、「中国と韓国が為替操作国に認定されるのでは」との観測報道もある。また、米上院外交委員会の重鎮、グラム議員(共和党・サウスカロライナ州)は2月19日、「議会では中国の為替操作国認定に対して超党派の支持があるため、仮に認定した場合は、議会もこれを支持する」との見解を示している。もしも認定に至った場合には、一時的とはいえ、人民元高に巻き込まれる形で円高が進行するリスクには警戒が必要だろう。

<ブレグジットの教訓>

また、4月23日にはフランスの大統領選第1回目の投票が行われる。ここではどの候補も過半数を獲得できない見通しで、1位と2位で5月7日の決選投票に持ち込まれる公算が大きい。おそらく極右政党「国民戦線」のルペン党首と、中道・無党派のマクロン前経済相との戦いになるとみられている。

オピニオンウェイの世論調査によれば、2月21日時点で58%対42%と、最有力候補と言われるマクロン氏をルペン氏が急速に追い上げている状況だ。マクロン氏のリードは2週間で約半分になった。ルペン氏は「ユーロの通貨同盟を離脱する」と主張しており、ここのところ仏国債が売られ長期金利が上昇するなど、市場もルペン氏勝利による混乱をじわり織り込み始めた。

実際、ルペン氏の主張するユーロ離脱や、欧州連合(EU)離脱、「自国第一」を明記する憲法の改正などには、議会の過半数の支持が必要であり、国民戦線が過半数を占めるのは困難であることを考慮すれば、ルペン氏が勝利したとしても、これらが実現する可能性は低いと言える。とはいえ、仮に第1回投票でルペン氏の支持率が予想外に高い、あるいは決選投票で実際に勝利するとなれば、いったんは市場がリスクオフに傾き、円高が進行する可能性は高いだろう。

では、やはり円高派が優勢なのか。ヒントは昨年6月の英国民投票でのEU離脱(ブレグジット)決定後の相場動向にありそうだ。実はブレグジット決定後のドル円相場は、106円から99円まで一日で急落したものの、その1カ月後には107円まで回復している。仏大統領選に関しても、ドル円単体への影響は、振れ幅は大きくても一時的に過ぎないだろう。

こうしたイベントを乗り越えて、6月以降、米連邦準備理事会(FRB)が2―3回の利上げを決定するとなれば、市場の目は再び「日米金利差拡大」に向かい、年後半にドル円は緩やかに上昇。年末時点では120円付近まで上昇している可能性が高いとみている。

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