SSブログ

[FT]チリ、輸出産業支援で「通貨戦争」に参戦

(2011年1月5日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)

チリは5日、「世界通貨戦争」への新たな参戦国となる。チリ中央銀行がペソ高阻止に向けて今年最大で120億ドルを投じ、中南米で最も市場開放が進み、経済運営でも成功を収めた同国の輸出産業を支援する意向を表明したためだ。

■チリ中銀、放任主義を転換

為替介入の発表は3日、ペソが対ドルで3年ぶりの高値に迫ったことを受けて行われた。チリ中銀は自国の変動為替相場に対する放任主義で知られていたため、発表は市場に驚きを持って受け止められた。

チリ中銀が5日から一日あたり5000万ドルを投入しペソ売り介入に乗り出すとの報道が伝わり、4日のペソ相場は約4%下落した。総額で国内総生産(GDP)の6%に相当する今回の計画は、国内過去最大で、1999年以来わずか4度目の介入となる。

チリのラライン財務相は「我々は為替相場の影響を受ける農業や産業分野の国内生産者や輸出業者を守ろうとしている。これは為替相場に効果を及ぼす対象が絞り込まれた手段だと考えている」と述べた。

だが、チリ中銀は今回の介入の主な理由は、ユーロ圏の債務危機や長期にわたる国際的な超低金利、ドル安による影響から自国経済を守るため、GDPの17%に相当する外貨準備を積み増すことだと明らかにしている。

同中銀は「外貨準備を増やせば、世界経済の先行き悪化にも対処することができる」とも述べた。

■地域的な影響は軽微か

今回のチリの介入によりメキシコは、為替介入もしくは海外からの債券投資にかかる税率を6%に引き上げたブラジルのような資本流入規制導入などの手段を使って自国通貨安を追求しない中南米地域唯一の大国となる。

一方、欧州の新興国では、トルコが過度の資本流入を阻止するため利下げを検討している。トルコも今年最速の経済成長を遂げる国の1つとなる可能性が高いことからすれば、これは矛盾した動きだ。実際に、一部のアナリストはチリの予想外の為替介入により、ほかの新興国も従来とは異なる政策に乗り出すのではないかと懸念している。

米調査会社4キャストの中南米担当シニアエコノミスト、ペドロ・トゥエスタ氏は「かなり保守的なチリの中央銀行が介入に踏み切るならば、ブラジルの中央銀行ならどんな手を講じるだろうか」と述べた。

だが、今回のチリの為替介入による地域的な影響を重要視しない向きもある。

野村ホールディングスの新興市場調査部長、トニー・ボルポン氏は「チリはドミノ倒しで介入に陥ったにすぎない」とした上で、「他国は既に介入を行っているため、今回のチリの介入を受けても各国の姿勢は変化しないと思う」と述べた。

■銅輸出で今年6%の成長見込む

4日の銅市場で1トン当たり9754ドルの過去最高値を更新した銅の輸出に後押しされ、チリの今年の経済成長率は6%に達すると予測されている。だが複数のアナリストは、チリが為替介入政策に乗り出したことは、13日のチリ中銀金融政策決定会合での追加利上げの見送りを意味すると指摘している。

チリのインフレ予想は約3.3%であるのに対し、現在の政策金利は3.25%にとどまる。だが利上げに踏み切ったところで、資本流入と一段の通貨高を招くだけにすぎないだろう。

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:マネー

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。